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初めに
昨今の営業職は一人あたりが抱える予算目標が年々増加しています。達成のためには大口案件の受注が必須となっている時代です。今回は私の経験を基に案件受注の確率を少しでも上げる交渉方法を紹介していきます。
案件とは?
営業職としては予算を達成させるのが仕事になるのですが、案件は予算を達成させるための手段です。ですが通常の日売りだけでは達成できるほど予算は甘くありません。必然的に案件を探してこなくてはならず、受注しなくては達成は難しいでしょう。この案件ですが、日売りがある営業なら自身の予算目標の2ヶ月分を賄えるだけの受注残があれば安泰でしょう。
自身の予算が1,000万円であれば2,000万円を受注残として持っておくような形になります。
案件を受注するためには
案件を受注残にしようにも具体的な話がないと行動できません。よってまずは探すことからです。担当顧客の事情や情報は漏らさず入手することです。
例:今年の8月に〇〇という工場に当社で受電設備を作成し納めることになりました。その際必要な資材として○○が必要になるのですが、見積を頂けませんか?
例2:今年度中に社内の空調機を全て最新の省エネ機種に更新することになっています。最安値の業者に発注することになります。図面をお渡ししますので見積を頂けないでしょうか?
等などです。まずは話を貰うこと、しかも具体的にです。
ここで言う具体的にとは
・納期はいつなのか?
・どのような事情で見積を取るのか?
・誰が発注するのか?
を可能な限り情報を集めましょう。
見積作成
では得られた情報を基に見積を作成します。出来上がった見積を顧客に提出するわけですが顧客と対面したら以下のことを聞き出すように意識してください。最近はリモートワークが主流になっているので対面が難しい場合は電話でやり取りすることになります。
①顧客に自社へ発注する意思があるか?
②本命のメーカーはどこなのか?
③発注はいつなのか?
発注がいつなのかは見積を出すタイミングでは遅いと思われるかもしれませんが、よほど納期が詰まっていなければ初回の見積で発注先を決定というのは稀です。
数日たったら
見積提出後に3日程経ったらフォローしましょう。先ほど発注はいつなのかを聞き出したのは、フォローする前に他社に発注されるのを防ぐためです。
このフォローの段階で自社が不利な状況であれば持ち帰って上司と対策を練ることになります。
先ほどの①顧客の自社への発注意思の有無ですが、発注意思がない場合はほぼ諦めです。上層部の政治的力が働いたか、自社との関係が浅い場合はこのパターンがあり得ます。
②の本命のメーカーが自社である場合はほぼ安泰ですが、競合の出方は要注意です。不利とみなしたら赤字覚悟で見積を再提出する可能性があります。
本命のメーカーが他社でありそうな場合は諦めるまではいかないですが不利な状況です。必ず理由を聞きましょう。
・仕様が他社製品でないと合わないパターン
この場合はほぼ詰みです。代替え案を出すしか逆転の目はないでしょう。
・価格差が開いており、他社が有利なパターン
これは逆転の可能性がまだあります。
価格差を逆転するためには
先程の見積フォローでは他社が安いということがわかりました。ここでやることは再度見積を提出させてもらうチャンスを顧客に貰うことです。このチャンスを貰えるかはわかりません。最安の業者の下をくぐらせることを嫌う顧客もいます。その際はこの案件は失注となりますが、ここで得た情報は次に活かせば良いのです。○○社の○○担当は初回見積で決定する。ならば初回から勝負に出た価格で見積回答したほうが良い。と考え次回のチャンスを待ちます。
チャンスを貰える場合ですが、ここで何も交渉せずに帰るのはもったいないです。何故ならターゲット価格が不明だからです。もう一回見積を出して、やっぱり駄目でしたでは時間の無駄です。顧客との付き合いが長かったり、関係が深いと指値を貰えることもありますが、ほとんどは指値なんて貰えません。ですがヒントは貰うようにしましょう。
※指値とはこの金額にすれば発注しますという確約がある金額
例:A君のX社との商談
見積提示額1,000万円 自社原価800万円
A君:「先日見積しました、某所の案件の状況はどうですか?」
X社担当者:「先日各社見積が揃ってそろそろ発注先を決めるんですけど、御社は2番手です」
A君「価格がですか?」
X社担当者「価格がです」
ここまでのやり取りでは顧客がかまをかけて値引き交渉をしている可能性があります。もしかしたら自社は1番手かもしれません。確かめる方法の一つは以下になります。
A君「まさかとは思いますが半額なんてことないですよね?」
X社担当者「それはないです。ただ800万円を切らないと発注は難しいですよ」
A君「800万ですか?900万の間違いじゃないですよね?」
X社担当者「いえ、800万台だったら発注しません」
ここまで聞けたら、自社が2番手だということに信憑性があります。そしてターゲット価格は700万円台ということになります。仮にX社担当者が嘘をついているならかなり交渉上手なかたです。原価が下がらずやむを得ず900万円で見積を出して注文がきたなら相手を称えましょうwww
あとは持ち帰って顧客提出が700万円台(できれば700万円)にできるかを仕入先とも話し合って検討しましょう。
できれば受注、できない・もしくはやらない場合は失注となります。(やらないのも選択としてありです)
ここまでのまとめ
・案件を受注するためには最初に見積の依頼を貰う
・必ず見積提出後の状況を確認する
・不利な場合挽回のチャンスがあるか検討する
・漠然と持ち帰るのではなくヒントを貰う
普段からこのようななやり取りを心がけていれば受注率が上がるのはもちろんですが、顧客との駆け引きを体験でき、商売が面白くなります。
案件の値引きを要求する顧客の対処
さて、A君の聞き込みもあり、710万円で見積提出し受注できましたが、顧客の最後の悪あがきで700万円ぴったりにできないか?等の交渉が最後に入ることがあります。私は可能であれば請けていました。これを請けるのと突っぱねるのでは印象が違います。次回の為にも請けたいところでもあります。(商談した相手と違う担当者が交渉してきたら断ります)ただし条件を付けます。
A君「わかりました、あと10万円値引きします。ですが、この案件はギリギリの利益で御社より受注しているので、できれば今引き合い中の案件Bも発注頂けるという前提にして貰えないでしょうか?」
ポイントは利益ギリギリで受注していることを顧客にも理解してもらうことと、他の案件もどさくさに紛れて受注しちゃおうということです。相手としては発注しなかったら悪者になるので、この時ばかりは相手の足元を見ても良いと思います。
値引きではなくサービスを
これは私の実際の経験から上手くいった例をA君に置き換えて紹介します。
A君は顧客Y社から空調工事1,200万円を予算取り用の見積として1年前に提出していました。ある日Y社担当者より連絡があり、
Y社担当者「見積を貰っていた空調工事を実際に発注したいので、再度見積をお願いします。但し3社見積を取りますので、実際に発注する金額で見積は作ってきてください」とのことです。
Y社担当者「それと見積に含まれていたこの部屋だけはまだ空調機が使えるので除外してください」という条件がありました。
私はこの案件に思い入れがあったので、提出期日1日前に持って行きました。後出しの方が他社の状況がわかるからです。
見積提示額950万円 原価800万円
Y社担当者「御社から予算見積貰っていたので正直に話します。30万円高いです。この場で30万円下げて貰えるなら発注します」
下げますというのは簡単です。ですがこれも顧客の交渉かもしれません。
とっさに思いついたのが除外された部屋の事
A君「見積から除外された部屋の分までこの950万円の範囲内で工事させて貰うというのはどうでしょうか?」
Y社担当者「それでもいいですよ。OKです。」
相手が即答だったのを今でも覚えています。30万円高いというのが本当か嘘かは未だにわかりませんが、実際に値引きではなくてサービスをしたことで、少しだけ得をしました。実際にこの規模になると部屋が一つ増えようが、工事原価は製品代を入れても10万円ほどしか変わりません。
値引き30万円した場合 売上920万円 原価800万円 利益120万円
1部屋サービスした場合 売上950万円 原価810万円 利益140万円
このからくりを知らない相手であれば、相手が得することを提案することで、利益の減少を防ぐこともできます。