近年、従来のルート営業を継続しつつも直需営業を新しく始める会社が増えてきています。なぜ直需営業を始めるのでしょうか?私はルート営業主体で会社生活を送ってきましたが、直需営業も3割ぐらいは行ってきています。その視点より、今回は企業が直需営業に取り組む理由とルート営業との役割分担及びそれぞれのメリットについて解説していきます。

ルート営業とは

そもそもルート営業とはどのような営業形態なのでしょうか?これは従来からメーカーや商社が行っている営業形態です。メーカーは毎日大量の製品を製造しています。ですが、製造したはいいが販売する人員がいなくては製品は売れず大量の在庫を抱えることになります。しかし販売しようにも販売員の数がターゲットとする顧客の数に対して圧倒的に足りません。そこで取り入れたのが販売を外部に委託です。製品の拡販を別会社に任せるということです。その代わり依頼された会社にも利益が出るように格安で製品を卸し、その会社は格安で仕入れた製品に自社の粗利を乗せて最終ユーザーもしくは更なる委託先に製品を卸していきます。このように様々な会社を経由して最終ユーザーや店舗に製品を卸すのがルート営業になります。製品が流通の道を通って最終ユーザーに行き渡るのです。製造側は委託先に格安で卸すデメリットより、販売・集金を行わなくて良いメリットの方が大きいと考えられています。更には委託先が優秀であればあるほど自社製品が勝手に売れていくのでシェアが伸びやすくなります。

ルート営業のメリット

ルート営業のメリットは以下になります。

・最終ユーザーに販売、集金を行わなくて良い

・販売力のある委託先に任せると自社製品のシェアが伸びる

・製品が勝手に売れる

ルート営業のデメリット

もちろんメリットだけではありません。同じように様々なデメリットがあります。

・委託先との関係が悪化すると、自社製品を販売してもらえない

・複数の会社を経由するので、人的ミスが起こる可能性が高い

・委託先の販売員全てを把握し、問いにも答えなくてはならず多忙である

・格安で製品を卸しているため、利益が少ない

直需営業とは

直需営業は先ほどのルート営業とは違い、自社製品を自社の営業員で最終ユーザーに卸す営業です。ルート営業では販売を外部に委託しているので、どうしても委託先の販売力に依存することになります。ですが「この商談は逃したくない」や、「この最終ユーザーは外部に委託するより、自社で営業した方が得である」との理由がある場合は直需営業が必要です。何よりルートを介さない為大きく利益がでます。更には建設業の許可を持っている事業所なら工事込みで製品を販売することができ、受注の幅が広がり、受注額も大きくなります。このように聞くといいことばかりだと思われそうですが、デメリットもあり、仕事が無いもしくは受注できない状態の時は売上はほぼゼロです。更には自社のルートの顧客が出入りしている最終ユーザーに営業を掛けるとルート顧客との関係悪化に発展しかねません。ですがそれでも直需営業に力を入れる会社が増えています。それはルート顧客との関係悪化のデメリットより直接受注した時のメリットの方が大きいからです。また最終ユーザー目線でも仲介業者にピンハネされるより直接購入した方が安く仕入れることができ、かつ商談も直接行えるので受注率もアップします。

直需営業のメリット

・ルート営業と比べて利益が大きく出る

・1件の受注額が大きい

・直接商談を行えるので受注率が良い

・一件の規模が大きいため社内会議でも目立つ

直需営業のデメリット

・自社のルート顧客と競合になった場合にトラブルに発展しかねない

・売上が無い月が続く可能性がある

それぞれの営業の理想の状態

各営業の理想の状態を説明していきます。

ルート営業の理想の状態

「勝手に注文が入り、売上が安定していること」これに尽きます。ルート営業は利益が少ないので物量で勝負しましょう。その為には委託先への営業に手間を掛けていられないのです。委託先に自分の分身となってもらうのです。その間に見込みのありそうな大口案件の見積をしたり、種まき作業をやっていきます。安定した売上の中で足りない分の売上を補填できる案件に注力するのです。これをやる為には顧客の選定顧客からの信頼が必要です。手間ばかり掛かり注文がなかなか入らない顧客は見積回答を後回しにしたりして遠ざけましょう。信頼はどのような形でも構いません。あなたの人間性であったり、製品知識であったり、情熱であったり一つは武器を持ちましょう。この状態になれば会社にいる時間が圧倒的に長くなります。というより顧客側から「困っている時に質問に答えられるあなたが会社にいてくれた方が良い、浮気はしないから営業に来なくていいよ」とまで言われています。ここまでくれば安泰です。社内からは○○社さん営業行ってるの?と突っ込まれたことは多々ありましたが、「行ってないです。行かなくても大丈夫です。」と自信を持って答えられるようになりました。

直需営業の理想の状態

「自身の予算の3ヶ月分の受注残を常に持っている」ことです。

その為の手段は二つあると考えます。

①常時仕事がある工場や施設を顧客に持つ

②複数の大規模な工場や施設の顧客と関係を維持する

①は工場の設備を毎週のように点検なり修繕しなくてはならない顧客を捕まえることです。これだけで仕事が無いという状態が改善され自然と受注残が増えます。

①はその会社の昔からの付き合いという側面が強く、なかなか無いパターンです。もしそのような工場が顧客になりうるチャンスがあれば全力で営業しましょう。そのような顧客が無い場合は②を目指すしかありません。例えばA~Jの10社を顧客に持っているなら今月はA社で1,000万の受注残、来月はB社で500万の受注残、再来月はC社で5,000万の受注残、そしてJ社が終わっているころにはA社B社が受注残になっているという状態です。ひとつの顧客で大規模な設備の工事は頻繁にありません。よって受注顧客をローテーションして常に商談を持ちかけられる関係を維持します。私の会社ではそのようにして常に大口の受注残をかかえ直需顧客のみで予算を達成する猛者もおりました。その為には売りっぱなしにしないことが大切です。設備を納めたなら月一回は用事が無くても訪問しましょう。「気にかけてくれているな」と思ってもらえれば次回の商談も自然と声が掛かります。

ルート・直需両方を高いレベルで維持している会社は最強

ルート営業のみの会社だと安定はするものの、利益は少なく爆発力もないです。逆に直需だけの会社だととにかく受注残がが無いと落ち着きませんし毎月の売上が安定しません。どちらも取り入れており、しかも高いレベルで維持できている会社は最強であります。では自社にルート・直需両方あるとしてその役割を見てみましょう。

ルート営業の役割

安定した売上の維持です。ここがボロボロだと毎月の売上が安定せず上層部も計算しにくいです。逆に安定していれば後直需でどれだけ注文を貰えれば今年度は達成だというのがわかりやすくなり、どの案件を取る等の戦略が立てやすくなります。どんなに顧客の調子悪くてもここまでは最低限見込めるであろう下限を自分だけでなく、上司も把握できるようにしておきましょう。

直需営業の役割

大口の案件と利益の確保です。直需営業の魅力は工事込みの案件と利益です。どうしてもルート営業だと薄利多売であり、大口の案件と言っても数千万規模が年に数件という感じです。直需の場合工事まで入れると1,000万越えは頻繁にあり億単位の仕事もあります。月の売上はルートに任せ、時間が掛かってもいいので大口案件受注に力を入れるべきです。

最後に

ルートと直需の違いはおわかり頂けたかと思います。どちらの営業も採用している会社では戦略的にルートが時間を稼いでいる間に直需がこれという一手を決めるということが可能になっています。実際私の会社でもこのような考えであったと思います。部署としてルート営業と直需営業がわかれているなら一度どのような認識なのかを腹を割って話し合うのもありかと思います。この二つがかみ合ったときは自分達でも驚くような絶好調状態が続きます。おかげで次年度の予算がとんでもないことになりましたが、予算が足りなくて全員苦しむよりはマシです。一番やってほしくないのはルートと直需で一つの案件を意地になって取り合うことです。ちゃんと理由を説明し、納得したなら身を引くことも大事です。ライバル心を燃やすのはいいですが、ちっぽけなプライドの勝負にならないようにしましょう。

投稿者について

短大卒業後就職し営業職経験を積みました。
趣味が多様で広くやっております。
スイッチソフト各種記事や営業経験での仕事のアドバイスができます。

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