一人前の営業とは何か?と問われた時一番最初に思いつくのが予算を達成しているかどうかですよね?顧客からの信頼等目に見えない部分もあるかとは思いますが、数字として見え、達成・未達が一目でわかるのでやはり予算に対しての実績での評価が大きく割合を占めます。ところが一人前と呼ばれる数字は年々上昇してきており、途中で投げ出したくなる時もあります。今回は投げ出す前に知ってほしい営業がどれだけ稼がなくてはならないかを説明していきます。
一人前の定義
一人前の営業はどれだけ稼ぐべき?と言われても個人のさじ加減がある為、具体的な数字は決まっていません。昔はよく、月当たり売上1,000万円・粗利150万円稼げれば一人前と会社の先輩からはしつこく言われていました。取引先にも「うちには1,000万円プレイヤーが3人もいる」と豪語していた社長もいた程です。事業所の場所や顧客規模にもよるかと思いますが、売上1,000万円・粗利150万円が少し昔の目安でありました。ですが今やその規模では会社は満足せず、売上1,500万円・粗利200万円は最低持ってきてほしいと役員から直接言われた程です。何故なら会社は成長しなくてはならず、従業員の昇給もしなくてはモチベーションが下がります。「さらに言えば売上2,000万円・粗利300万円を毎月稼げたらお前は一流だと認めてやる」とある役員からも言われました。当時は冗談でしょ?と途方もない額に思え、実際に目指す日が来るとは考えてもいませんでした。
売上を上げても自分の給料ではない
予算の話になると「なんでこんなに予算高いのですかねぇ?僕の手取りの100倍売らなくてはいけないなんて笑っちゃいますよね」と半ば心が折れかけていた後輩もいました。彼も2,000万円の目標で年度をスタートし上期が終わった時点で1/4しか達成が見えておらず絶望的な状況です。ですが彼は下期に大口案件を次々に決定し、12月の段階で年度100%越えまで受注残を増やしました。若いのにこの予算を突破するのはすごい、こいつには勝てんと思わせるほどの快進撃です。ですが彼は貰える給料に納得していません。なぜ自分が苦労している張本人なのに・・・今年だけでも倍額貰ってもいいだろ。と気持ちはすごいわかります。私も同じぐらいの予算を持ってスタートしたわけですから。ですが私の場合人を使っていたのでこの気持ちは理解できるけど自分の為に動いている人がいるからなぁと思えばそこまで文句は出てきませんでした。
そうです、会社には直接売上や粗利を稼ぐ営業・サービスと、直接稼がないがいないと会社として成り立たない役職者・業務・経理が必要です。自分の販売実績から納品書・請求書まで自分で作っていては時間がいくらあってもたりません。彼らがそこの業務をこなしてくれるので私達は営業に行けるのです。更には自社と顧客の役職者同士の繋がりで良好な関係が継続できている顧客もあったりします。大きな目標を達成したからと言って100%自分の力ではないのです。彼らは必要であるから雇われている→雇っているからには給料を払うよって彼らの給料を払うために営業員一人の給料を倍額払うことはできません。これが嫌なら独立して自営業を始めるしかないです。
実際に自分の給料が倍貰えないか考えてみる
もしあなたが昨年度予算を達成し今年度の給料を倍にしてくれと会社に頼んだとします。その場合はシュミレーションしてみましょう。
A君所属X支店の例(A君は営業8名中の1名)
X支店 社員20名 内 支店長1名 部長1名 課長3名 営業8名 内勤業務5名 経理2名
予算を持っている直接稼ぐ社員は営業の8名とし、予算は売上1,000万円・粗利150万円
各人の月収は
支店長80万 部長60万 課長50万 以下30万と仮定します。
その他に事業所にかかる費用として、
建物と土地のローン 月100万
光熱費 月30万
社有車のローン 月100万
遠方出張の旅費 月20万
ガソリン代 月10万
顧客との交際費 月30万
雑材購入 月10万
その他事務機器のメンテ代 月20万
事業所によって出ていくお金に違いはあるかもしれませんが、まあ大体こんなところでしょう。
まず毎月出ていくお金を合計します。
人件費 80+60+50x2+30x16=720万
事業所の経費 320万
合計1,040万円 この事業所では月1,040万円以上稼がなくては赤字になります。
では入ってくるお金は
粗利150万x8=合計1,200万円
1,200-1,040=160
全員が達成できれば160万円の黒字ですね一見A君の給料を倍にしても問題なさそうですが、そんなことするよりこの160万円は来月以降のために残しておくと考えます。来月、更には年度を通しても達成するかわからないからです。
仮に予算の90%で今月を終えた場合は1,200x0.9=1,080万円
もうこれはA君に+30万円払うとギリギリの黒字です。これでは危険すぎます。A君に払いたくないというわけではありませんが、現実的に厳しいですね。ただ、毎月160万円の黒字を続けていけるなら半年毎に960万円貯まります。ここで昨年貢献してくれたA君に賞与という形でボーナスを渡すのが殆どの会社です。このように個人の給料を上げようにも事業所もしくは会社全体の儲かり具合があるので簡単には上がりません。特例を出そうなら、何故あいつだけ?と他の社員のモチベーションを奪うことになります。何より経営に影響します。
結論:いい結果を出しても給料は上がらない。しかし賞与は例年より多く貰える可能性がある
結果を出しただけ貰えないのか?
残念ながら一般的な会社では昇給以外では増えないでしょう。しかし逆に結果が悪すぎても最低限は貰えるという保証もあります。会社によっては完全成果主義で結果を出せばそれに応じて給料が増える会社も出てきています。どちらが良いかは個人の判断でしょう。どちらにしても会社が儲かっている状態でなければ賞与にしても成果主義にしても個人には還元されません。
最後に
会社が儲かる為には?と考えられ決められたものが予算です。それを達成して会社に貢献できたなら個人にも還元して欲しいと思うのは当たり前の感情であり、モチベーションにもつながります。指示通り予算を達成して会社が儲かりました。その結果私たちをどうしてくれるの?という時に応えられない会社や応える気が無い会社は見切りをつける時代かもしれません。実際に予算を達成するために莫大な時間と集中力を会社側に提供してきましたよね。予算を達成するのはそれ程の事です。私も予算を達成した時はそれなりの評価を受けたかったですが、それは過去の事、もう次年度が始まっていると言われているような気がしてしまうような少し寂しい時代です。