売上予算または売上目標がある会社が殆どだと思います。営業職では毎月付き合っていかなくてはならない数字となり、社内での評価にもつながるかと思います。今回はそんな予算を作る場合のコツを紹介していきます。
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初めに
売上予算・目標(以後予算と表記します)はトップダウン方式で上司から部下へ指示があり、既に決められている数字を毎月追いかけることをイメージされるかと思いますが、近年は予算は決まっているもののグループもしくは課単位で振り分けられ、課内で誰がいくら予算を持つかということを話し合って決めるパターンが増えてきています。私が営業で顧客を訪問した時、顧客も予算があるので、「毎月の目標はいくらなんですか?」という話になったりします。意外と多いのが「個人には目標は無い、課で年間○○もしくは月○○」との回答が多いです。予算はやらされるものではなく、自分達で目標を決めるものと、時代の移り変わりを感じます。
実際に決める前に
3月は年度末が近づくにつれ来年度の話が多くなってくる頃です。課長よりA君に指示があり「来年度の予算編成を決めたいから、各自の目標を作ってくれ」とのことです。では早速作りたいところですが、その前に準備するものがあります。
①今年度の仕上がり予想 まず最初に今年度の実績を予想します。
②担当顧客の今年度の実績 自分の顧客が年平均もしくは月平均どれだけ購入しているか再確認します。
③来年度の受注残及び今年度売上の大口案件 来年度の受注残は把握しておきましょう。
④今年度の当月内受注当月内売上 日売りになります。案件として存在していなかったが、月内に受注・売上ができたものを拾い出しておきます。
これだけあれば、スムーズに作ることができると思います。では実際に作ってみましょう。
①A君の今年度仕上がり予想 3月の仕上がり予想を足すとA君は月平均1,900万円売上を上げています。今年度の目標予算は1,900万円でしたので、A君は見事達成する予定です。
②続けて主要の担当顧客の実績を拾い出しました。わかりやすいように月平均で出します。
a社 300万円 b社 100万円 c社 100万円 d社 200万円 e社 1,000万円
その他 200万円 合計1,900万円
これはe社以外は例年とほぼ同じ実績です。
③来年度の受注残も拾い出しました。ついでに受注残になりそうな決定待ち案件も出してみました。()内が決定待ち案件です。
4月 2,300万円(300万円)
5月 200万円
6月 800万円(200万円)
7月 2,000万円(400万円)
8月以降 0円
今年度売上た大口案件としてe社から2,400万円の大口の注文を貰っていました。ここでの大口は自身の予算の1ヶ月分程の金額の案件をカウントしましょう。
④最後に日売りを出していきます。 A君の場合、一番日売りが上がったのが7月の800万円、反対に一番少なかったのが、5月の400万円、昨年の平均としては600万円です。
シュミレーションしながら作成する
では①から④が出揃った段階でまず②の主要顧客が今年度と同様に売上が上がるのかをシュミレーションしてみましょう。
a社からd社は大口案件は無かった為、来年度も同等程度の売上を予想して良いと思います。問題はe社です。2,400万円の大口を貰っていました。これを12ヶ月で割ると200万円になります。つまりe社の1,000万円の実績の内200万円は大口案件によるものです。この200万円は毎年あるものではなく、今年度だけが特別となりますので除外して考えましょう。
そうなるとe社が200万円沈む分今年度より主要顧客は現時点ではマイナスとなる見込みです。では来年度予算を今年度より落として1,700万円で組んで良いかいうと、よほどの理由が無い限り認めて貰えないでしょう。私の会社では昨年度予算の5%アップが必須でしたので、できれば2,000万円で予算を組みたいところです。ギブアップする前に活路を見出しましょう。
まず他の主要顧客を見てみます。a社c社は店内シェアがほぼ100%でこれ以上シェアは伸ばせる見込みがありません。d社は今年度が過去最高の売上で店内シェアが伸びてきています。d社が伸ばせる可能性がありそうですが、これはまだ見込まないでおきます。あくまでも可能性なのでまだ確信できていないものを宛にしたくはありません。b社は頑張ればシェアを伸ばせることはわかっていますが、b社はモンスター顧客で度々トラブルになっています。できればこれ以上お付き合いしたくない顧客です。減ることはあっても伸びることはないでしょう。
では何を宛にするのかというと、受注残になります。4月の2,300万は既に2,000万円をオーバーしています。逆に5月は厳しそうです。太字にしました7月の2,000万円は実は主要顧客でないその他から受注しております。ちょうど予算の1ヶ月分ですね。これは今年度のe社の大口案件と同じことと捉えることができるのではないでしょうか。少し楽になりましたね。最終的にはこの受注残に日売りを足し、決定見込み案件も予算内に見込みます。更には主要顧客も年々規模が拡大していると想定して自身の予算アップ率と同じように都合良く5%程アップして考えます。顧客毎の予算を立てるとすると
a社320万円 b社100万円(これ以上伸ばす予定が無いため) c社110万円 d社210万円 e社840万円 その他420万円(不足分を全てその他に持ってきます) 合計2,000万円
顧客毎の目標は上記になります。不可能な数字ではない気がします。毎月どの顧客が達成している、不足しているを遅くても月の半ばには確認し見込みを出しておきましょう。
では今度は月毎の予算を組んでみましょう。
組みたい予算:2,000万円/月x6ヶ月(4月~9月)=1.2億円
受注残+決定見込み案件+日売り+顧客伸び=合計と考えます。
4月 2,300+300+600+80=3,280≒3,300万円
5月 200+400+80(5月が日売り最低月の為)=680≒700万円
6月 800+200+600+80=1,680≒1,700万円
7月 2,000+400+800(日売り最高月の為)+80=3,280≒3,300万円
8月 600万円(現状日売り以外に見込めるものが無いため)+80=680≒700万円
9月 2,300万円(残りの不足分を全て最終月に持ってきます)
これは2,000万円/月で予算を組んでも何とかなるかもしれませんね。ですがこれはかなり余裕がある組み方です。これだけ余裕があると実際には他の課員の状況を上司が見て、更に上乗せされることが殆どです。何故なら半年で見えていない数字が9月の2,300万円だけだからです。上司がこれに気づかないことに期待して2,000万円で申請しましょうww
受注残が少ない場合
先ほどのA君は7月に受注残2,000万円があったので2,000万円/月で組むことができました。無かったら2,000万円で組むことは難しいですが、それでも2,000万円で組むことをお勧めします。最低でも今年と同じ1,900万円です。低い予算を組むと顧客を伸ばす努力をしないと思われがちです。直属の上司であれば事情を理解してくれると思いますが、他は数字しか見ません。なのでやる気を見せる為にも今年度以上の予算は意識しましょう。
ではどうやって不足分2,000万円を見つけるかですが、正直見えてこない数字です。見えてこない数字は見えていないところから集めるしかありません。
①d社が伸ばせるか再度検討・調査する。
②新規取引先を探す
③その他の中から主要顧客になりうる顧客を探す
④主要顧客にセールを行って売上UPを狙う
が一般的だと思います。④の場合達成褒賞等で経費が掛かるので簡単にはできないかもしれません。
上司に数字を提示する時は「1,700万円しか見えていませんが、①~④を行って2,000万円に挑戦します」という言い方が良いかと思います。
最後に
自分で予算を組むからには根拠を説明できないと認められませんよね。上の例は私がよく予算を組むときにやっていることです。普段予算を自分で決めず、上司の指示で予算を持たされている方は予算数字の根拠を上司に聞いてみてはいかがでしょうか。まともに説明できないのであれば適当に考えている可能性があります。交渉してみるのもありです。自分の給料に影響するのなら尚更です。ただし、もめた場合に私は責任を取れませんので交渉は計画的にお願いします。