4月が近づいてきていよいよ新年度が始まります。新年度といえば新入社員ですね。4月は新卒の方も働きながら学ぶことも多くて、あっという間に1ヶ月が過ぎることでしょう。今回は新卒の方を対象に1ヶ月経つ頃にやらなければいけない締め作業や他社との取引の方法、支払い条件を説明していきます。今までの日常と違う世界に突然入るわけですから知らない用語があって当然です。その時にバタバタしないように予習という意味で閲覧頂ければと思います。また、今回は顧客の債権管理も業務に含まれている営業の方にも参考になる内容になっています。
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会社が売上を行う方法
前回の記事で紹介しましたが、品物やサービスが売れると売上が発生します。売上についての説明は前回の記事に記載しておりますので、そちらを参照ください。
例えばあなたがスーパーやコンビニで買い物をしようとし、品物をレジに持っていくと店員さんがバーコードをスキャンしてレジで買い上げた金額を提示してくれるはずです。このときあなたは基本的には現金を出して支払って品物を受け取ると思います。今回はカードやスマートフォンでの支払いは除外します。この時お金を貰った店舗側に売上が立ち、あなたは支払いを行ったことになります。店舗側の売上のタイミングはあなたが支払った時です。この支払方法を現金取引と言い、売上と支払いが同時に行われます。スーパーやコンビニはあまりにも身近な為、気付きにくいのですが、会社も同じようにして売上を上げています。ただ取引条件が店舗と違うだけです。
会社が行っている取引方法
店舗の場合、不特定多数のお客さんが利用する為、買い物をしたお客さんから都度現金を貰わないと集金ができませんよね。後で集金するにしても店舗を利用したお客さんの住所を全て調べて訪問するのは困難です。よってツケで買い物することは不可能だと思います。ですが、会社対会社の売買ではツケ払いにしないと逆に効率が悪いです。買い上げる件数が月に数百件多いところでは数千件にもなります。これでは都度集金していたら時間がいくらあっても足りません。そこで多くの会社が採用しているのが信用取引です。
信用取引とは?
信用取引とは名前の通り、相手の支払いを信用して販売することです。この信用するというのは二つの意味があり
・相手の人間性を信用し、約束通り支払ってくれる
・相手の経済力を信用し、支払う能力があると判断している
厳密には契約書や保証人が必要ではありますがX期間内に行った買い物は、Y期間内に支払ってくださいね。ということが契約書に記載されています。
例えば自社が顧客A社と新しく取引を始める場合、契約書の中に取引条件という項目が必ずあります。
「月末締め翌月末振込」
と書かれていたりします。この取引条件は一例です。顧客によってこの取引条件は異なることが多いので、顧客A社の取引条件を顧客B社に漏らす等は絶対に行ってはいけません。信用取引の信用をこちら側から破棄するような行為です。
では月末締め翌月末振込とは実際にはどのような意味なのでしょう?
月末締め=これは売上の期間を毎月月末に一旦区切りますよという意味です。
翌月末振込=これは毎月月末に請求書を送りますので、翌月月末までに振り込んでくださいねという意味です。
例:顧客A社が当社から購入した内容
①2021年4月1日 家庭用エアコン 10万円
②2021年4月10日 エアコン取付工事一式 10万円
③2021年4月20日 電動工具・配管材一式 60万円
④2021年4月25日 コンプレッサー設備 100万円
⑤2021年4月30日 空気清浄機 20万円
⑥2021年5月10日 自動車用バッテリー 30万円
A社の場合、月末締めなので⑥は除外されます。4月1日~4月30日までに購入した①~⑤の合計200万円を翌月末(5月31日)までに振り込んでください。ということになります。
では⑥はいつ払うかというと6月30日までにです。
当社はA社に対して4月30日に200万円の請求書を発行しA社は請求書の内容と取引条件通り5月31日までに振り込むことで、取引が成り立っています。これは買う側からは非常にいい条件です。4月1日に買った商品を5月31日まで払わなくて良いことになり、それまでにお金を準備できれば良いわけですから。ですが売った側はリスクになります。
A社に請求書を発行した4月30日から5月31日までの間(厳密には①を購入した4月1日から)に万が一A社が倒産したり夜逃げされたりしたら、200万円と5月10日に購入した⑥は未回収となり重大な損失になります。ですが、このようなことは起こりえないと信用しているからこそ信用取引は成り立っています。つまり契約書がある限りA社はそれだけのリスクを背負っても良いということを自社が判断しているのです。
債権債務とは
先ほどの例では、4月30日にA社に請求書を発行しています。この時自社はA社に対して債権があるという状態です。債権とはお金を貰える権利です。逆にA社は自社に対して債務があるという状態です。債務とはお金を支払う義務です。逆に言えば債権とは回収しきれていない現金と捉えることもできます。
債権は以下の合計になります。
・売掛金残高 売上処理を行ったが回収していない残高
・未決済手形残高 決済期日がきていない受取済み手形(ここでは割愛します)
・受注残高 注文を受注済みではあるが売上処理を行っていない、もしくは未着の為行えない分の残高(厳密には債権に含まれないと考えるが、管理上は必要と判断している)
営業の方は自分の担当顧客の債権がどの程度残っているかはある程度把握していた方が良いです。当然ながら債権残高は少ない方がリスクが低いです。ですがあまりにも低いと売れてなさすぎで、それはそれで問題になります。ここは営業側と経理側の永遠の課題のような気がします。
売上処理を行うタイミングと納品書
A社の例ですと4月1日に家庭用エアコンを購入しましたが、では何をもって売上処理を行っているのでしょうか?エアコンを納入したはいいが請求書だけ送ってもA社が悪質な場合「そんなものは購入していない」と言い張ることもあり得ますが、実は納品書発行と同時に売上処理が完了している会社が殆どです。ですがこの辺は会社ごとの売上の仕組みが実際には様々であるため一概には言えません。わからない方は自社の先輩に聞いてみると良いでしょう。そして納品書発行までの手順は①②が殆どです。
①商品が顧客へ直送の場合 運送会社の受領書のサインを貰う
②自社の配達で納品の場合 受領書を発行し受領書にサインを貰う。
①②のエビデンス(証拠)をもとに納品書(品物を納品しましたという書類)を発行します。納品書を郵送→後日すべての納品書の内容を請求書に記載という流れが一般的です。
月末までに売上処理を行わなくてはならない理由
もし①のエアコン購入を売上処理を忘れてしまい、4月30日を過ぎて5月10日頃に売上処理を行ったとします。そうすると本来であれば5月31日に貰えていたお金が6月30日に入ることになり、1ヶ月回収が遅くなってしまいます。更にはエアコンを仕入れた為、仕入先にも自社は5月には支払いを行わなくてはなりません。仕入先に債務がある状態です。月末締め翌月末振込は回収が速い方ですが、中には月末締め3か月後末振込等、お金が貰えるまでの期間が長い取引条件も存在します。納品の受領を貰ったらすぐに納品書を発行しましょう。
最後に
いかがでしょうか。お金を扱う仕事は最初は緊張しますが、会社員ならいずれ通らなくてはならいない道です。今回の内容を纏めると、
①会社対会社の取引は信用取引で成り立っており、現金取引ではない
②取引条件には締めと支払いが必ずある
③納品書を発行する為に受領を貰う
④売上処理は当月内に必ず行う
私はこの長い分は補足で良く①~④を覚えて頂けたという思いです。私はある会社に新卒で入社後このことを教えてくれる先輩はいませんでした。1年ぐらい何も知らずに漠然と会社生活を送っていました。正直2年目ではかなり出遅れていたと痛感することになります。逆に言えば入社1年目でこの辺りがバッチリわかると一目置かれる存在になることでしょう。